許可と法律

キッチンカーの営業許可の取り方|保健所の手続きと設備の基準

開業を考えている人
キッチンカーで、週末にクレープを売りたいと考えています。許可はどこで、何から取ればいいですか?
編集部
営業の拠点がある地域の保健所で、車ごとに許可を取ります。車を作る前に、売るメニューを決めて保健所に相談するところから始めます。

キッチンカーで調理して売るには、食品衛生法の飲食店営業の許可を取ります。 許可は車1台ごとに出て、申請先は営業の拠点を管轄する保健所です。

車に積む給水タンクの容量によって、作れるメニューの範囲が決まります。 そのため、車を作る前にメニューを決め、保健所に相談します。

国が法令で決めているのは基準の大枠で、シンクの数、仕込み場所が要るかどうか、許可で営業できる範囲は、自治体ごとに違います。

キッチンカーに要る許可の種類

車の中で調理して売る営業は、食品衛生法施行令35条1号の「飲食店営業」に当たります。 キッチンカーだけの業種は政令になく、施行規則は施設の基準を「飲食店営業のうち、自動車において調理をする場合」として定めています。

許可を出すのは都道府県知事で、保健所を置く市と特別区では市長と区長です(食品衛生法55条1項、76条)。 設備の基準は、国が省令で示した基準を参考にして(参酌基準と呼ばれます)、都道府県などが条例で決めます(同法54条)。 同じ飲食店営業でも、自治体によって基準の細部が違うのはこのためです。

調理をせず、包装された食品を売るだけなら、許可ではなく届出で足りる場合や、手続きが要らない場合があります。 たとえば北海道の案内では、できあがった弁当や惣菜、包装された食肉や魚介類を売る場合は届出、常温で長く保存できる包装済みの食品は手続き不要としています。

許可の単位と有効期間

許可の申請書には「施設の所在地」を書く欄があり、自動車で調理する営業ではここに自動車登録番号を書きます(食品衛生法施行規則67条1項2号)。 許可は車両を単位に出るので、車を2台使うなら、それぞれに許可が要ります。 申請の時点で車のナンバーが決まっている必要があるということでもあります。

許可には、5年を下らない有効期間が付きます(食品衛生法55条3項)。 期間そのものは自治体が決め、北海道、札幌市、福岡県は5年、福岡市は6年です。 期間が切れる前に更新の手続きをします。

給水タンクの容量とメニューの関係

国の基準(施行規則 別表第20)は、自動車で調理する飲食店営業に、1日の営業で使う水を供給でき、かつ廃水を保管できるタンクを求めています。 容量は営業の内容によって約40L、約80L、約200Lの3段階です。 国の通知は、それぞれの容量で実施できる営業内容の目安を示しています。

給水、廃水タンクの容量とメニューの目安(国の参酌基準)
タンク容量省令の区分実施できる営業内容の目安(国の通知)食器
約40L簡易な営業簡易な調理のみ(温める、揚げる、盛り付けるなど)、または単一品目のみ使い捨て食器
約80L比較的大量の水を要しない営業大量の水を要しない2工程程度までの簡易な調理、または複数品目使い捨て食器
約200L比較的大量の水を要する営業大量の水を要する調理、複数の工程からなる調理通常の食器

※容量は「1日の営業で供給でき、かつ廃水を保管できる水量」で、省令は「約40リットル」のように「約」を付けて書いています。

※通知は、業務計画をよく聞き取り、業務の実態に合った容量のタンクを整備させるよう自治体に求めています。容量の区分は目安で、品目や工程の数え方は自治体ごとに違います。

※施設の基準は各都道府県が条例で決めます。国の調査では、47都道府県のうち44が参酌基準と同じで、3が一部異なっていました。

出典(確認日 2026.10.13)

  1. [1] laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100023
  2. [2] www.mhlw.go.jp/content/11130500/000582237.pdf
  3. [3] www.mhlw.go.jp/content/10906000/001666048.pdf

この目安は、タンクが大きければ何でも作れるという意味ではありません。 通知は、保健所が業務計画をよく聞き取り、業務の実態に合った容量のタンクを整備させるよう求めています。 品目や工程の数え方は自治体ごとに違い、たとえば札幌市は、40Lと80Lのどちらでも原則1〜2品目程度とし、器具を車内で洗うなら80Lが要るとしています。 大阪市は工程数と品目数に加えて、通常の食器を使う、生の食肉を切るといった作業を挙げた一覧で、必要な容量を決めています。

保健所に相談するときは、次の項目を書き出していくと、容量の区分を判断してもらいやすくなります。 神奈川県の案内が、貯水設備の容量を決める材料として挙げている項目です。

  • 品目:売るメニューの数(飲み物も1品目に数えるか)
  • 食数:1日に作る量
  • 工程:車内で行う作業(温める、揚げる、切る、盛り付けるなど)
  • 水量:車内で洗う物(器具、食器、食材)と、手洗いに使う水

自治体ごとの容量の扱いは「キッチンカーの営業許可の条件を自治体別に比較」の表で比べられます。

車に要る設備(国の基準)

設備の基準は、飲食店や食品工場と共通の基準(施行規則 別表第19)が、自動車にもほぼそのまま当てはまります。 自動車で調理する飲食店営業に当てはめないとされているのは、床面と内壁の不浸透性、排水設備、便所、更衣場所の4項目です(別表第19第5号ハ)。

設備 国の基準(別表第19第3号) 自治体の運用の例
手洗い設備 手指の洗浄消毒装置を備えた流水式。水栓は、洗った後の手が再び汚れない構造 福岡市はレバー式、センサー式、足踏み式などを例に挙げる
洗浄設備(シンク) 使用目的に応じた大きさと数の洗浄設備(必要に応じて熱湯や蒸気を供給できるもの)。槽の数の指定はない 福岡市は原則2槽。大阪市は手洗い用と洗浄用を分け、洗浄用を1槽以上
給水設備 飲用に適する水を、必要な場所に十分な量供給できる 福岡県は、水道水以外を使う場合に1年以内の水質検査結果書を求める
換気 作業場所の真上の結露を防ぎ、換気が適切にできる 福岡市は換気扇、大阪市は換気扇や窓など
冷蔵、冷凍 必要に応じて備える 福岡市と大阪市は、温度計を付ければクーラーボックスも可とする
内装 床、内壁、天井は清掃、洗浄、消毒しやすい材料と構造 —
廃棄物容器 汚液や臭いが漏れない、水を通さない容器 —

シンクの槽数のように、国の基準が数を決めていない項目は、自治体の運用で決まります。 国が47都道府県を調べた資料では、作業場の高さ、提供口の網戸、運転席と調理場の間仕切り、手洗い設備と洗浄設備を兼ねてよいかどうかなどで、自治体ごとの運用の違いが見つかっています。 製作会社の標準の仕様が、自分の自治体の基準に合っているとは限りません。

仕込み場所は要るのか

国の施設基準(別表第19と第20)を読んだ範囲では、自動車での営業に「許可を受けた仕込み場所」を求める規定は見当たりませんでした。 仕込み場所の扱いは、自治体の運用で決まっています。

  • 横浜市:「営業許可のない施設で仕込み等を行うことはできません」とし、仕込み場所がある場合はその許可証の写しを求める
  • 北海道:自動車で使う食品の調製、予備加工、包装などは、原則として許可を受けた施設で行う
  • 札幌市:仕込み作業がある場合に限り、仕込み場所の許可証の写しを出す
  • 大阪市:一次加工が必要な場合に、加工する施設の許可証の写しを求める
  • 東京都港区:申請のときに、仕込み場所の営業許可書の写しを出すよう案内している

自宅の台所での仕込みは、横浜市や北海道の案内では認められていません。 車の外で下ごしらえが要るメニューにするなら、営業許可のある施設(飲食店の厨房やシェアキッチンなど)を借りる費用も見込んでおきます。 車内で完結するメニューにすれば仕込み場所は要らない自治体もありますが、そのぶん車内の工程が増え、必要なタンクの容量が上がることがあります。

食品衛生責任者

営業者は、食品衛生責任者を定めます(施行規則 別表第17第1号イ)。 キッチンカーも飲食店営業なので対象です。

調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格を持っていれば、そのまま食品衛生責任者になれます。 資格がなければ、都道府県知事などが行う養成講習会を受けます。 国の通知が示す講習の標準は、食品衛生学2.5時間、食品衛生法3時間、公衆衛生学0.5時間と確認試験で、計6時間程度です。 修了証明書は、ほかの都道府県に移っても使えます。

受講料は実施する団体で違います。 東京都食品衛生協会の養成講習会は12,000円(税込。受講料10,000円は非課税、教材費2,000円)です。 日本食品衛生協会のeラーニングについては、国の通知の参考資料に標準的な受講料として1万円(税込)とあります。

申請の時点で資格を取り終えていない場合の扱いは自治体によります。 愛知県の案内では、資格がない場合は養成講習会の受講の申込みが要るとしています。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

営業者は、原則としてHACCPに沿った衛生管理を行います(食品衛生法51条1項2号、2項)。 飲食店営業は、その中でも「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよいとされる営業です(施行令34条の2、施行規則66条の3)。

具体的には、業界団体が作り厚生労働省が内容を確認した手引書を使って、衛生管理計画を作り、実施した内容を記録して保存します。 大阪市のキッチンカーの案内も、手引書に基づく衛生管理計画の作成と、毎日の記録と保存を求めています。 許可を取ったあとも続ける義務なので、記録用の用紙やアプリをどうするかも開業前に決めておきます。

許可で営業できる範囲

キッチンカーも固定の店と同じく、原則として許可を出した自治体の区域でしか営業できません。 隣の市や県で売るには、その自治体の許可が別に要るのが原則です。

ただし、関係する自治体が施設の基準や監視の方法をそろえていれば、主な拠点を管轄する自治体の許可だけで広い範囲を認めてよいと、国は2019年の通知で示しています。 これを受けて、神奈川県は県内全域、北海道は全道一円、千葉県は県内一円で営業できる許可にしています。 国の調査の時点では、都道府県をまたぐ例は大阪府と和歌山県の間だけで、2025年6月1日から相互に乗り入れられるようになりました。

厚生労働省は2026年3月27日付けの通知で、この大阪府と和歌山県の事例を自治体に示しています。 自治体ごとの範囲と通知の内容は「キッチンカーの営業許可の条件を自治体別に比較」にまとめています。

営業許可のほかに要る手続き

保健所の許可を取れば、どこでも売れるわけではありません。 売る場所、使う火、売る物によって、別の窓口の手続きが要ります。

手続き 要る場面 根拠 窓口
道路使用許可 公道で、場所を移動せずに店を出す 道路交通法77条1項3号 警察署
道路占用許可 公道に店を設けて続けて使う 道路法32条1項6号 道路管理者
露店の開設の届出、消火器 祭りや花火大会などの催しで、火を使う器具を使う 市町村の火災予防条例 消防署
構造等変更の手続き 改造で、車検証の記録事項(定員、車体の形状など)が変わる 道路運送車両法67条 運輸支局等(軽自動車は軽自動車検査協会)
酒類の販売業免許 未開封の缶や瓶の酒を、持ち帰り用に売る 国税庁の案内 税務署
開業届 個人で事業を始める 所得税法229条 税務署

道路使用許可は、交通の妨げになるおそれがないことなどが条件です。 道路占用許可は、道路の外に余地がなく、やむを得ない場合に限られます(道路法33条1項)。 公道で売るにはこの二つを満たす必要があり、例外は「ほこみち」(歩行者利便増進道路)の区域などに限られます。 公園や私有地で売る場合は、公園の管理者の許可や、土地の持ち主との契約が要ります。

消防の手続きは、2013年の福知山花火大会での露店の火災をきっかけに、各市町村の火災予防条例に入りました。 東京消防庁の案内では、火を使う器具を使う露店は開設の3日前までに消防署へ届け出て、器具ごとに消火器を1本以上用意します。 山形県鶴岡市は、キッチンカーで出店する場合も露店として扱うとしています。 期限や対象になる催しは市町村ごとに決まるので、出店先を管轄する消防署に確かめます。

8ナンバー(特種用途自動車)にするかどうかは、保健所の許可とは別の話です。 食品衛生法の施行規則が申請書に求めているのは自動車登録番号で、8ナンバーであることを条件にする規定は見当たりません。 改造で車検証の記録事項が変わる場合は15日以内に変更の手続きをし、どの改造で「加工車」などの8ナンバーに当たるかは、国土交通省の通達が定める車体の形状ごとの要件をもとに、検査の窓口が判断します。 車の選び方は「キッチンカーの車両の選び方」で扱っています。

酒は、祭りの会場などでコップに注いでその場で出すなら、販売業免許は要りません(国税庁の案内)。 未開封の缶や瓶を持ち帰り用に売るには免許が要り、催しの会場で臨時に売るための期限付酒類小売業免許は、原則としてすでに酒類の製造や販売の免許を持つ人が対象です。

開業届の提出期限は、所得税法229条では、事業を始めた年の分の確定申告の期限までです。 青色申告の承認申請は期限が短く、1月16日以後に事業を始めた場合は、始めた日から2か月以内です。 開業全体の流れは「キッチンカー開業の始め方」にまとめています。

手続きの順番

設備の基準がメニューで決まり、申請書には車のナンバーを書くので、手続きは次の順に進めます。

  1. 売るメニューを決める。品目、1日の食数、車内の工程、使う食器(使い捨てか)を書き出す
  2. 営業の拠点(車庫や仕込み場所)と、主に売りたい地域を決める。拠点で申請先の保健所が決まり、売りたい地域でその許可が使えるかを確かめる
  3. 保健所に相談する。メニューと設備の図面を持っていき、タンクの容量、シンクの数、仕込み場所の要否を確かめる
  4. 食品衛生責任者の資格を取る(調理師などの資格がなければ講習会を受ける)
  5. 仕込み場所が要るなら、営業許可のある施設を確保する
  6. 車を製作するか購入し、登録してナンバーを付ける。改造で構造等変更が要るかは、製作会社と車検の窓口に確かめる
  7. 保健所に営業許可を申請する。手数料は、確認できた自治体で新規16,000〜20,500円です
  8. 許可が出たら、衛生管理計画を作って記録を始め、出店先ごとの手続き(消防の届出、公園の許可など)を済ませる

3の相談を6の製作より前に置くのは、タンクやシンクが基準に足りないと、作った後で手直しが要るためです。 相談の予約の要否、申請から許可までの日数、車の設備をどう確認するかも保健所ごとに違うので、3のときにあわせて聞いておきます。

車両の費用は「キッチンカー製作費の相場」、許可の手数料を含めた開業資金は「キッチンカーの開業資金の内訳」で調べられます。

許可の次に決める設備と出店場所

保健所の基準に入っている換気扇、冷蔵庫、照明、給水ポンプは、どれも電気で動きます。 加熱調理を電気で行うなら、営業時間ぶんの電力を、ポータブル電源、発電機、出店先の外部電源のどれでまかなうかを決めます。 選び方は「キッチンカーの電源の選び方」、必要な容量は「電源容量の計算ツール」で確かめられます。 キャッシュレス決済を受けるなら、端末の通信と電源も合わせて「キッチンカーの決済端末の選び方」で比べてください。

許可で営業できる範囲が決まったら、その範囲の中で出店先を探します。 出店先の種類と出店料は「キッチンカーの出店場所の探し方」にまとめています。

参考資料

いずれも2026年10月13日に確認

よくある質問

軽トラのキッチンカーなら、許可は取りやすいですか?
車が小さいからといって基準が緩くなることはありません。国の施設基準は「自動車」とだけ定めていて、車の大きさで分けていません。どの容量の区分になるかは、売るメニューと車内の工程をもとに保健所が判断します。
一度許可を取れば、どこでも売れますか?
売れません。許可は原則として、許可を出した自治体(都道府県、保健所を置く市、特別区)の区域でだけ使えます。県内一円などに広げている自治体はありますが、都道府県をまたいで使えるのは、国の調査の時点では大阪府と和歌山県の間だけでした。
8ナンバーにしないと営業許可は取れませんか?
食品衛生法の施行規則には、8ナンバー(特種用途自動車)であることを許可の条件にする規定は見当たりません。8ナンバーになるかどうかは、改造の内容をもとに、車検の窓口(運輸支局等、軽自動車は軽自動車検査協会)が判断します。
食品衛生責任者になるには、調理師の免許が要りますか?
要りません。都道府県知事などが行う講習会(国の示す標準で6時間程度)を受ければ、食品衛生責任者になれます。

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