開業の始め方と費用

キッチンカー開業の始め方|費用、手続き、準備の順番

会社員、週末の出店を検討中
キッチンカーを始めたいのですが、車を買うのと許可を取るのと、どちらから進めればよいですか?
編集部
先に売るメニューを決めます。メニューで要る設備が決まり、車両と許可はそれに合わせて選ぶことになります。

キッチンカーの開業は、何を売るかを決めてから、車両、保健所の営業許可、設備と電源、出店場所の順に準備します。 この順になるのは、メニューの工程数と水の使い方で営業許可に必要な給排水タンクの容量と設備が決まり、それを載せられる車両の大きさが決まるためです。

費用の大半は車両です。 製作会社が公式に出している価格では、車両込みの新規製作が軽トラで158万〜380万円(税込、厨房設備込み)でした(「製作費の相場」の表)。 営業許可の手数料は、この記事で調べた自治体では1万6,000〜2万500円です(「自治体別の条件比較」の表)。 費目ごとの内訳と計算例は「開業資金の内訳」に、自分の条件での合計は「開業費用シミュレーター」にまとめています。

開業までの5つの段階

それぞれの段階で決めたことが、次の段階の選択肢を絞ります。

段階 決めること それで決まること 詳しい記事
1. 何を売るか メニュー、調理の工程数、食器(使い捨てか) 給排水タンクの容量、シンク、冷蔵設備、使う電気機器 この記事の次の節
2. 車両 車種、新規製作か中古かレンタルか 初期費用の大半、運転に要る免許、入れる出店区画 車両の選び方
3. 営業許可 許可を受ける自治体 営業できる範囲、仕込み場所の要否 営業許可の取り方
4. 設備と電源 ポータブル電源か発電機か、決済端末 出店できる場所(発電機を禁じる出店先がある) 設備と機材の選び方
5. 出店場所 出店先、出店料の方式 毎月の固定費 出店場所の探し方

何を売るかで決まること

キッチンカーの営業許可では、調理の内容に応じた容量の給水タンクと廃水タンクが求められます。 国の基準(食品衛生法施行規則の別表第20)は、容量を約40L、80L、200Lの3段階で定めていて、国の通知がそれぞれで実施できる営業内容の目安を示しています。

給水、廃水タンクの容量とメニューの目安(国の参酌基準)
タンク容量省令の区分実施できる営業内容の目安(国の通知)食器
約40L簡易な営業簡易な調理のみ(温める、揚げる、盛り付けるなど)、または単一品目のみ使い捨て食器
約80L比較的大量の水を要しない営業大量の水を要しない2工程程度までの簡易な調理、または複数品目使い捨て食器
約200L比較的大量の水を要する営業大量の水を要する調理、複数の工程からなる調理通常の食器

※容量は「1日の営業で供給でき、かつ廃水を保管できる水量」で、省令は「約40リットル」のように「約」を付けて書いています。

※通知は、業務計画をよく聞き取り、業務の実態に合った容量のタンクを整備させるよう自治体に求めています。容量の区分は目安で、品目や工程の数え方は自治体ごとに違います。

※施設の基準は各都道府県が条例で決めます。国の調査では、47都道府県のうち44が参酌基準と同じで、3が一部異なっていました。

出典(確認日 2026.10.13)

  1. [1] laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100023
  2. [2] www.mhlw.go.jp/content/11130500/000582237.pdf
  3. [3] www.mhlw.go.jp/content/10906000/001666048.pdf

同じメニューでも、許可を受ける自治体によって必要な容量や設備が変わります。 たとえば神奈川県は、貯水40L以上200L未満の軽自動車では単一品目しか扱えないとしていて、たこ焼きに飲料を足すこともできません。 札幌市は、40Lは1工程まで、器具を洗うなら80Lが要るとしています。 メニューを決めたら、許可を受ける保健所の基準で、どの容量の区分に当たるかを確かめます。

メニューは使う電気機器も決めます。 業務用の電子レンジは1,260W、IHコンロは1,400W、電気フライヤーは1.3kWと、加熱する機器は1台で1kWを超えます(メーカーの公式の仕様。出典は記事末尾の参考資料)。 加熱調理を続けるメニューほど、電源の選び方が限られます。

調理をせず、包装された食品を売るだけなら、営業許可ではなく届出で足りるか、手続きが要らない場合もあります。 北海道の案内では、完成済みの弁当や惣菜は届出、常温で長く保存できる包装済みの食品は手続き不要としています。 扱いは品目と自治体で違うので、売る物を保健所に伝えて確かめます。

車両の用意のしかた

車両の用意のしかたは、新規製作、架装済みの中古車、レンタルの3つです。 価格は、車両込みか、厨房設備込みか、税込かで大きく変わります。

用意のしかた 価格の例 含むもの、税 詳しい記事
新規製作(車両込み) 軽トラ 158万〜380万円 車両と厨房設備込み、税込 製作費の相場
新規製作(内装のみ) 軽バン 98万円〜、軽トラ 120万円〜 車両は含まない、税込(FOOD TRUCK PRO)。軽トラは荷台の箱(架装)が別 製作費の相場
架装済みの中古車 軽トラ 119.9万〜313.8万円 支払総額、税込 中古の買い方
レンタル 1日9,800円〜、1か月18万円 税込(オムニバキッチンカー。軽は確認日の時点でキャンペーンの月9万9,000円) 車両の選び方

中古車は、新規製作より安いとは限りません。 軽トラの中古の掲載例10件のうち7件は、支払総額が車両込みの新規製作の例(158万円、税込)を上回っていました。 新品のボックスや200Lの給排水タンクを積んだ車は、中古でも高くなります。

車種ごとの違い(免許、給排水の容量、出店区画の広さ)は「車両の選び方」で比べています。

保健所の営業許可

車の中で調理して売る営業は、食品衛生法の「飲食店営業」として、保健所を通じて都道府県知事など(保健所を置く市や特別区では市長や区長)の許可を受けます。 キッチンカー専用の業種はなく、自動車での営業は飲食店営業の一つの形として扱われます。

許可は車両ごとに受けます。 許可の申請書には、施設の所在地の代わりに、その車の自動車登録番号を書くことになっているためです(食品衛生法施行規則67条)。

許可が有効な範囲は、自治体によって違います。 原則は保健所を置く自治体の区域ごとですが、次のように広い範囲で使える例があります(国の調査と各自治体の案内による)。

  • 神奈川県:2021年6月1日以降に許可を受けた車は、県内全域
  • 北海道:2021年6月1日以降の新規の許可は、札幌市などを含む全道一円
  • 福岡県:県内一円。ただし福岡市、北九州市、久留米市では、各市の許可が別に要る
  • 大阪府:2025年6月1日以降に関西広域連合の基準で許可を受けた車などは、大阪府全域と和歌山県全域

ほかにも、許可の有効期間(食品衛生法は「5年を下らない」期間とし、北海道と福岡県は5年、福岡市は6年)、仕込み場所の扱い、手数料が自治体ごとに違います。 たとえば横浜市は「営業許可のない施設で仕込み等を行うことはできません」としていて、自宅の台所では仕込めません。 条件の違いは「自治体別の条件比較」の表に、申請の手順は「営業許可の取り方」にまとめています。

許可とあわせて、営業者は食品衛生責任者を定めます(食品衛生法施行規則の別表第17)。 調理師などの資格がなくても、都道府県などが開く講習(国の通知では標準で6時間程度)を受ければなれます。 東京都食品衛生協会の講習は12,000円(受講料10,000円は非課税、教材費2,000円は税込)です。

注意

許可の条件を、ほかの自治体の例や開業支援会社の記事で判断しないでください。 同じ県の中でも、保健所を置く市では条件が違うことがあります。 許可を受ける保健所の公式の案内で確かめてから、車両の仕様を決めます。

設備と電源

電気を使う機器を動かすには、ポータブル電源、発電機、出店先の電源のどれかを使います。 価格の例は、容量1,024Whのポータブル電源が109,800円(Jackery 1000 New V3、税込)、出力1.8kVAのインバーター発電機が248,490円(ホンダ EU18i、税込)です。

発電機は、出店先によっては使えません。 妖怪盆踊り2026(東京都立川市)の出店要項は「ガソリン使用の発電機厳禁」とし、屋外で使えるポータブル電源だけを認めていました。 南寝屋川公園の手作り市(大阪府寝屋川市)は、発電機と電源の持ち込みを禁じていました。 反対に、蕨市役所の正面玄関前広場のように、出店料に電源の使用料が含まれる場所もあります。

使う機器から必要な容量を出すには「電源容量の計算」を、電源の種類ごとの向き不向きは「電源の選び方」を、ポータブル電源の機種は「ポータブル電源の比較」を使ってください。 カードや電子マネーで払いたい客に応じるなら、決済端末も要ります。 手数料と通信、電源の条件は「決済端末の選び方」で比べています。

イベントで火を使う場合は、消防署への届出が要ることがあります。 東京消防庁は、火を使う器具を置く露店(移動販売車を含む)を開くときは3日前までに届け出て、器具ごとに1本以上の消火器を備えるよう求めています。 届出の期限や対象の行事は市町村の火災予防条例で決まるので、出店先を管轄する消防署に確かめます。

出店場所と出店料

出店料には、1日ごとの定額と、売上に応じて払う方式があります。 自治体や道の駅が公開している例は次のとおりです(税込かの記載がないものを含む)。

場所 出店料 出典
各務原市役所 1日191円。市の電源を使うと計512円 各務原市
蕨市役所 正面玄関前広場 1日1,000円(電源の使用料込み) 蕨市
道の駅 三矢の里あきたかた 1日2,500円(市内の事業者)、3,000円(市外) 安芸高田市観光協会
道の駅 あいの土山 1日3,000円。売上が30,000円を超えたら売上の10% あいの土山
妖怪盆踊り2026(イベント) 3日で150,000円(税込、電源込み) 妖怪盆踊り

出店先は、自治体の公募や、出店場所のマッチングサービスで探します。 探し方は「出店場所の探し方」に、マッチングサービスの料金は「マッチングサービスの比較」に、売上から出店料や原価を引いた残りの計算は「売上と利益の目安」にまとめています。

開業届と青色申告の期限

個人で始めるなら、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を出します。 期限は、事業を始めた年の確定申告の期限までです(所得税法229条、国税庁の案内)。 「開業から1か月以内」と書いた解説も多いのですが、確認日の時点の条文と国税庁の案内はどちらも確定申告の期限としています。

青色申告をするなら、承認申請書の期限が先に来ます。 その年の1月16日以後に事業を始めた場合は、事業を始めた日から2か月以内です(国税庁の案内)。 青色申告特別控除は、複式簿記で記帳して期限内に申告すれば55万円、さらにe-Taxで申告するか優良な電子帳簿保存をすれば65万円です(国税庁 タックスアンサーNo.2072、令和8年4月1日現在)。

開業準備のチェックリスト

準備の順に並べています。 右の列は、条件を確かめる先です。

順 やること 確かめる先
1 メニューと調理の工程、使う食器を書き出す 許可を受ける保健所の基準(タンク容量の区分、品目と工程の数え方)
2 許可を受ける自治体を決める その許可で営業できる範囲(県内一円か、市内だけか)
3 車両の仕様を決め、見積もりを取るか、中古車の現車を見る 製作会社や販売店。設備の一覧や写真を持って保健所に基準に合うかを聞く
4 車外で仕込むなら、仕込み場所を決める 保健所(仕込み場所に営業許可が要るか)
5 食品衛生責任者の講習を受ける 都道府県の食品衛生協会など
6 営業許可を申請する 保健所
7 電源と決済端末を用意する 使う機器の消費電力、出店先の発電機の扱い
8 開業届を出し、青色申告にするなら承認申請書も出す 税務署
9 出店先に申し込む 出店先の要項(区画の広さ、発電機、PL保険の加入の確認など)
10 イベントで火を使うなら、消防署に届け出る 出店先を管轄する消防署

始め方を選ぶときの目安

買う前に営業を試したいなら、レンタルがあります。 オムニバキッチンカーは1日9,800円(税込、火〜木曜)から借りられ、1か月は18万円(税込)です。 レンタルの車で営業するときも営業許可は要るので、誰の名前で、どの車で許可を取るかを、レンタル会社と保健所に確かめます。

初期費用を抑えたいなら、手持ちの軽トラに箱を載せる方法があります。 hitの軽トラ用の箱は、製作が555,000円(税込)、軽トラへの載せ替えが別に3万円(税込かの記載なし)で、車両は持ち込みです。

メニューが決まっているなら、そのメニューで要るタンク容量とシンクを先に保健所で確かめ、それに合わせて新規製作するか、装備が合う中古車を探します。 費目ごとの金額は「開業資金の内訳」で、自分の条件での合計は「開業費用シミュレーター」で確かめられます。

参考資料

いずれも2026年10月13日に確認しました。 表の部品の出典は、各表の下に載せています。

よくある質問

キッチンカーを始めるには、何から決めればよいですか?
売るメニューから決めます。メニューの工程数や水の使い方で、営業許可に必要な給排水タンクの容量と設備が変わり、それを載せられる車両の大きさが決まるためです。容量と営業内容の対応は自治体ごとに運用が違うので、許可を受ける保健所の基準で確かめます。
キッチンカーの営業許可が1つあれば、全国で営業できますか?
できません。営業許可は、原則として保健所を置く自治体の区域ごとに要ります。神奈川県の県内全域や北海道の全道一円のように広い範囲で使える例はありますが、都道府県をまたいで使える例は、国の調査の時点で大阪府と和歌山県の間だけでした。
開業届はいつまでに出せばよいですか?
所得税法229条と国税庁の案内では、事業を始めた年の確定申告の期限までです。青色申告をするなら、承認申請書は事業を始めた日から2か月以内(その年の1月16日以後に始めた場合)に出すので、こちらの期限が先に来ます。

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